平和な時間。安心できる空気。
開放感溢れる屋上で、新鮮な風に浸っていれたのは何分だったろう。
(せっかくのお昼休みなのにな……)
嗚呼、もう、だから……にっこり笑顔で微笑まないで。
(それでなくても恐いのに)






Prince Charming

(第三話)





――と実琴は屋上に来ていた。



「やっとゆっくりできるー!」



ぐーっと手を空に向けて背伸びをする。
するとゴキゴキ骨の鳴る音がした。



「うっわ、凄い音。肩か首凝ってんじゃないか?」
「んーー…そうかも。朝から凄まじかったし………」



HRが終わってからと1、2、3時間目の休憩中にクラスメイト(と他のクラスの人達)に質問攻めにされました……。
それも数がハンパな量じゃない。次々と左右前後から変わる変わる話かけられるもんだから何回か目が回りそうになった。
豊君に助けを求めようとしても、その豊君も大量の男の集団がやってきて毎時間何所かに逃げていたから無理だったしさ。
(転校生ってこんなに注目されるもの? 普通男子校だったら男が増えたから嫌になるじゃん。私は女だけどさ……。)

――は結構鈍かった。



「あっ、そだ!校内案内ありがと」
「ああ。ごめんな、飯食う前に走り回って」



例のごとく二人共4時間目が終了してから掴まりそうになったので、お弁当を持って、逃げた。
(恐かったな……。どんどん人数増えてきて、ドドドドって……)
そしてそのまま校内を追いかけ回されたんで校内案内へと突入したんだ。



「楽しかったし、ジュース奢って貰ったし、早く案内終わったからのんびりできるし、ここ気持ちいいから全然よゆーだよ」
「ならいいんだけど」
「さっご飯食べよー!お腹すいたー」
「そうだな食べようぜ。いただきます」
「いただきまーーー……」



――バンッ!!! ガチャ。



「だーー!!何でみんなして人の顔見んだよ!ここに来るまでも、購買に行くまでもジロジロ見られたし。この学校ってそんなに転校生が めずらしいのかっ?」
「あー…河野の場合それだけじゃ、ないかな……多分」
「それだけじゃない理由ってなにさ。それ以外の理由が見つからないんだけど。それともあれか? 俺が坂本と一緒にいたのがいけないのか!?」
「そんなことないって」
「いーや! 絶対そうだ! だってみんな坂本見て会釈してたしさ」
「それには色々と事情がっ……」
「それってどんな事情!?しかも『坂本様』って呼ばれてたしっ」
「それにも事情があるんだって……」


「!! あっ……アイツは……」
「? どうしたんだよ? 食べないのか?」



背筋が凍った。後ろ、後ろにアイツがいる…。振り向いたらだめだ。
(なんで今日はこうも……)
逃げ出したい 逃げ出したい 逃げ出したい!
(でもここは屋上。出入り口は一つだけ)


ってば! どうしたんだよ!!」



ゲ。



「シーーーー!! 今その名前で呼んじゃだめ!!」
「はあ?」
「今から僕の名前は『山田太朗』って事にしよう!! ねっ。タロちゃんって読んでくれればいいから!!」
「何言ってんだよ、………もがっ!!
「あーー空がーーキレイーーだねーー豊ーー君ッ♪」



あははは。と、豊君の首に手を回しつつ口を塞ぐ。
(どうかバレませんよーーにッ!!)
ぶっちゃけもう会いたくない人ナンバーワン。
彼はキラキラした人達とつるんで、ごわごわの奴らに追い掛け回されればいいよ。

冷や汗ダラダラで、早く早く昼休みが過ぎればいいのにと
彼等が私に気付かずに去って行ってくれればいいのにと、願っていたのに。



………?あっ、!!」
「(しまったーーーーーバレターーーーー! 否、僕は今は『山田太朗』だ。なんかじゃ、ない!!)」
「ねえでしょ?」
「……………。(全面的にシカト体制でいこう)」



結構あっけなくバレたよ。
沈黙が長くなるにつれて、背中がジリジリと熱くなってきた。
後ろを振り向かずにその様子が想像できてしまって、もう最悪だ。
本当に直ぐにでもこの場から逃げ出したい衝動にかられる。
(今なら宇宙人との交流とか喜んでやるのに)
豊君がもぞもぞと動き始めた。
(もう少し我慢しててッ! お願いだから)


………。三秒以内にこっち向かないと、どうなるか………分かるよね?」
「こっ河野!?どうしたんだよ?」
「いーち、にーーい、さあー……」
「あれーー河野亨君じゃーーーーん。アハハ、奇遇ダネッ★」



振り向くと同時に豊君を解放して、『あれ?偶然ですね』的に振舞ってみた。
(笑顔固まってる!固まってますからッ!)

昼休みはまだまだたっぷり二十分もある。
河野亨の顔から目を反らせずにいたら、視界の隅に黒いものが目に入った。


―― 屋上の柵に、二羽雀が止まってこっちを見ていました。










to be continued later...

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あと会ってないのはシホウダニ。
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rewrite :06/09/26
ワンドリ投票箱に清き一票を!!!


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