G線上のアリアが体育館中に響く中、斜め前の席で美咲が声を堪えて泣いていた。
それを私はぼーっとしながら、斜め後ろの席で眺めていた。
視界の隅に綺麗に咲いた桜が体育館の窓から見える。

――今日は、卒業式。






un(able to respond to) 04






ひらり、ひらり。紺色のスカートの上に桜の花びらが落ちてくる。
中庭の大きな桜の木の下で、美咲と二人で座っていた。
ぽつり、ぽつりと呟く美咲の言葉に相槌しながら、
桜の花びらを意味も無く見つめていた。



「ねえ……
「なあに?」
「先輩……私のこと忘れちゃわないかな?他に好きな人出来ちゃわないかな?」
「火原先輩に限ってそんなことないでしょ」
「でも、先輩みんなに優しいんだもん……」
「そんな先輩を好きになったのは、だあれ?」
「わ、たし」



息を1回吐いて、美咲の顔を真っ直ぐ見据える。



「先輩がみんなに好かれているのを見るのが嫌?」
「……………」
「先輩が誰にでも優しいのは嫌?」
「……………」



目と目を合わせてそう問うと、目を反らされた。



「でも、そんなのは唯の我がまま」
「………でもっ!先輩は私の彼氏だよ!」
「だけど先輩は美咲の物じゃない」
「………そう、だけど」
「欲張りすぎちゃ駄目。欲しがりすぎちゃ駄目」
「これ以上何も求めちゃいけないってこと?」
「そうじゃなくて、ほどほどにって事だよ。手に入れすぎちゃったら………」
「手に入れすぎたら?」
「きっと……後悔するよ?」



大きな風が吹く。
すると花びらがいっきに舞った。
埋もれるスカートに視線を移し、さっきまでと表情を変える。

私の言葉に困惑しているのが分かるから
もう、惑わすようなこと言わないから
安心していいよ?

遠くで聞こえる声に頬を緩ますと
それに、と明るい口調で続けた。



「先輩は美咲の彼氏なんだから“お願い”してみればいいじゃん!」
「お願い……」
「そっ。先輩にさ『毎日電話して下さいね!』とかさ」
「『電話してくれないと泣いちゃいますよ』とか?」
「そうそう!そんな可愛いお願いだったら聞いてくれると思うよ」
「うん!先輩見つけて言ってみる。一緒に第二ボタンも貰っちゃお♪」
「いいなーーー。私もボタン欲しいな」
が頼んだらみんなくれるって。美人さんだもん」
「そっかな」
「そうだよ!あっ、2組の足立君の事好きならしいよ」
「ボタン貰えるの来年じゃん」
「いいじゃん来年貰えば〜。私は今日貰っちゃうけど」
「もう他の人に取られてるかも!」
「そうだ!早く先輩の所行かなきゃ!」
「あっちで美咲の事呼んでる声したから行ってみたら?」



ありがとう!と言って、美咲は去っていった。
しばらくまたぼーっとしてから立ち上がった。
私も行こう。

どこに?
どこかに。



「心配しなくても、大丈夫だから」



美咲に言ったのか、自分に言ったのか。
自嘲気味に笑って
胸の痛みに気付き、また笑った。
どんどん遠くに行ってしまう貴方に「             」と呟く。
止まってくれないのなら………


とりあえず、私も進んでみようと思う。










to be continued later...

……………………………………………………………………………………………………………………………………
ほぼ1年ぶりの更新。中学時代の話終了です。次からは主人公1年生、火原2年な感じで。
みんなを均等に出すつもりですが、友達の彼氏が火原なので火原が多くなるかもです。
(ちょっと主張したかった事 ⇒ 1話…1月、2・3話…2月、4話…3月です。)
retouch :06/09/06
ワンドリ投票箱に清き一票を!!!


BACK